k-nakama:予算の無駄遣い、といった話になると、建築は、「ハコモノ」などと呼ばれ、あまり評判がよくないようです。. 確かに、報道などで紹介されるものの中には、 びっくりするような無駄
k-nakama:予算の無駄遣い、といった話になると、建築は、「ハコモノ」などと呼ばれ、あまり評判がよくないようです。. 確かに、報道などで紹介されるものの中には、 びっくりするような無駄なものもあって、 一体どのような議論の末に、 こんなものが出来てしまうのか、 と不思議に思ってしまいます。 . 考えてみると、 こういったことの根本的な原因は、 欲しいもの、必要なものをつくっているわけではないから、 ということに尽きるのではないでしょうか。 . 政治とか経済とか、 何か別のことが、重視された結果なのかもしれません。 . それでは、 本当に欲しいものかどうか、本当に必要なものかどうか、 といったことは、どのようにはかればよいのか。 . これは、 とても難しいことなのかもしれませんが、 もしかしたら、 建設にかかる費用の一部を、 必ず、それを必要とする住民の寄付でまかなうこと、 なんていうように決めてしまえば、 案外簡単なのかもしれません。 . 自腹を切ってでも、ほしいものかどうか、 ということで判断するというわけです。 . ちょっと、乱暴でしょうか。 . でも、 それに近いようなプロセスを経て、 建築されたものもあるようです。 . . 群馬県高崎市にある、群馬音楽センター。 . その前庭にある、有名な記念碑。 「昭和三十六年ときの高崎市民之を建つ」…。 . . 昭和20年、 戦後の荒廃の中、文化を通した復興を、ということで、 高崎市民オーケストラ(後の群馬交響楽団)が設立されます。 . しかし、 満足に演奏する場所さえないという現状もあり、 「地方の文化振興こそ大切」と、 音楽ホール建設の必要性が訴えられます。 . その後、 徐々に、ホール建設の機運は高まっていきますが、 市の財政は苦しく、十分な予算がとれないことから、 市内の全世帯から寄付を募ろうということになったのだそうです。 . そして、 二年間にわたって集められた募金を基に、 群馬音楽センターは建設されます。 . 総工費の、実に三分の一が、 市民や企業からの寄付金だったといいます。 . そして、 その群馬音楽センターは、 設計した建築家、アントニン・レーモンドにとっても、 その活動の最大のピークとでもいえるような建築になりました。 . . レーモンドの信条でもあるという、建築の五つの原則。 . 単純(シンプル)さ 正直さ 直截(卒直)さ 自然さ 経済性 . レーモンドは、 これに加えて、あるいは関連して、 この群馬音楽センターの設計においては、 最も重要となる、三つの方針を挙げています。 . 一つ目は、無駄を省くこと。 寄付金を基に建てられるのだから、 無駄なことを一切省き、 出来るだけ長く使うことができるものを目指したといいます。 . その方針から、 壁や天井を、ギザギザに折ることで、 柱のない大空間をつくり出す、折版構造の、 コンクリート打ち放し仕上げを、 選択したのだそうです。 . コンクリートの使用量が少なくてすみ、 仕上げも不要、ということのようです。 . 出来上がった、その空間は、 シンプルで、 且つ、ダイナミックなものとなりました。 . 二つ目は、客席と舞台を一体化すること。 音の伝播を均一にし、 一体感のある内部空間を目指した、 ということのようですが、 演ずる人も聴衆も、 すべてが同じレベルにあることは、 民主主義のルールである、 という考えもあったようです。 . 戦中、 軍施設の仕事をしていたレーモンドにとって、 何か特別な思いのようなものも、 あったのかもしれません。 . そして、三つ目は、環境に合わせること。 建設地は、旧城址で、 石垣が巡り、お堀がとりまく、 美しい環境でした。 その風景を損なわないように、工夫し、 全体の高さも、 極力低く抑えようとしたのだそうです。 . (にもかかわらず、 現在、そのすぐそばに、高層の市庁舎が建っているのは、 どうしたことなのでしょうか?) . 世界中どこへ行っても、 どのような気候風土であっても、 同じようなものが建つ、 国際様式とでもいうような、近代建築が主流であった当時。 . 周囲の環境を重視し、その建築の持つ意味を重視して建てる、 というこれらの考え方は、 新しいページを開くものとなりました。 . そして、 そのような建築が、 住民がどうしても必要とした中から生まれてきた、というのも、 なにか、考えさせられる話ではないでしょうか。 . http://knakama.seesaa.net/article/388077075.html . -- source link