ggiizzmmoo: どん兵衛の天ぷら──────────────────────────────────────────────── 定休日の朝、居間に行くと店主(配偶者)はいなかった。自分よりも
ggiizzmmoo: どん兵衛の天ぷら──────────────────────────────────────────────── 定休日の朝、居間に行くと店主(配偶者)はいなかった。自分よりも先に朝食を食べてから自室に戻り二度寝をしているようだ。テーブルにはまたしてもどん兵衛を食べた形跡がある。 幾度か触れている話だが、店で使っている出汁は、値段を問わず鰹節問屋が扱う一番良いものを取り寄せて使っているらしい。気に入らなければこれは一番ではないといって交換してもらっているようだ。二級三級のものだと、あれやこれやという理由で交換してはもらえないらしい。それほどに出汁にこだわりを持つ男。それが店主(配偶者)だ。 それなのになぜ、この人はいつもどん兵衛を好んで食べているのだろうか。 しかも今回は天ぷらを丸ごと残してあり、なんだか不気味でもある。日本蕎麦でも具材の乗った「種物」を蕎麦通は避ける節があるが、これも同じことなのだろうか。敢えてのプレーンなのか。そこまでどん兵衛が好きか。 いろいろ不明なままカップを片付け、手付かずの天ぷらは小袋に入ったまま置いておいた。どうせ食べないだろうが、手付かずのものをすぐに捨てるのも忍びない。自分の悪い癖だが、今回も二・三日の執行猶予を持たせてから捨てよう。それから自分も少しなにかを腹に入れてから二度寝に入る。 午後、店主(配偶者)と昼飯を食べながら、何故どん兵衛の天ぷらを乗せないのかと問うた。するといや乗せたという。閉店後、店の残り具材で揚げた本式のかき揚げを持ち帰り、それをどん兵衛に乗せて食べたようだった。 妙な事をする配偶者だ。そう思いつつ味を聞けばバランスが悪く非常に不味かったという。確かに。カップ麺に店のかき揚げはヘビーそうだ。どん兵衛についてくるあの吹けば飛ぶような天ぷら。あれはあれで計算し尽くされた結果なのかもしれない。 ______ ところで今週の定休日は社を休み、自分は店主(配偶者)とは別行動で小旅行に赴いていた。よって今朝、空腹のまま冷蔵庫を開けても、めぼしいものはなにも入っていない。 旅行疲れのためか料理する気にもならないので、自分は戸棚から乾麺の蕎麦を取り出した。これを熱いめんつゆで、かけそばにして体を温めてから二度寝しよう。蕎麦が出来上がり箸をつけようとすると、ふと、テーブルに残されたどん兵衛の天ぷらが目に入る。ちょうどいいのでこれを乗せると、急遽天ぷら蕎麦となった。なんだか嬉しい。 そしてこれが疲れた胃にはちょうどいい加減の軽い天ぷらで、結果満足のいく朝食となった。 -- source link