リカとアイ 8 当然そのまま「わかりました、虐めましょう」という話にはならない。というかなりようがない。その正当な理由と、僕でなければならないという理由も併せて聞かなければどうしようもない。
リカとアイ 8 当然そのまま「わかりました、虐めましょう」という話にはならない。というかなりようがない。その正当な理由と、僕でなければならないという理由も併せて聞かなければどうしようもない。 「・・・ダメかな?」 「いや、まずは落ち着いて。話聞かせてもらわないと、何がなにやら。」 この辺の早急さは若さ故だろうか。僕はそんなリカが微笑ましく、ついニコニコ・・・してしまっていたと思う。 まずは落ち着いて、ゆっくり話を聞いてみる。 「えへへ、ごめんなさい、やっぱ急すぎだよね?」 リカは自分の生い立ちを、その境遇をゆっくりと語りだした。 虐待。 実の親からの虐待。 一言で片付けてしまえばそういうことになる。 もちろん僕はリカの生い立ちを克明に覚えているし、ここで細かに描写することも出来る。 出来るのだが・・・ここでその内容を語る必要はまったく感じられないので割愛する。 その時僕は 「どうにかしなきゃな」 とだけ考えていた。そう、そんな告白を初対面の男にするリカの気持ちを思うと、そう思わずにはいられなかった。 僕はそう思っていた。どうにかしたい。でもどうすればいい? 考えがまったくまとまらない。 だが、1つだけわかっていたことがある。それは、 「どうしていいかわからないことを、リカにさとられてはならない」 ということだった。 リカはインスピレーションのみで僕を選んだ。今、リカにとって一番悲しいことは僕が困惑することではないのだろうか。勝手ながらそう思う。ならば僕も拙いながらインスピレーションでリカに応えたい。 僕はリカに残り四分の一程度になったサワーを飲み干すように促し、店を出ることにした。 リカの望みを叶えるには白木屋では都合が悪すぎるからだ。 勘定を済ませ店を出る時に僕の腕にそっと手を回してくるリカ。・・・この格闘家のなり損ないみたいな男、しかも初対面の男の腕にどうして手を・・・と、考えが巡ってしまう。 いかん。やめだ。考えても仕方ない。 そう、考えるんじゃない。感じるんだ。と、かのブルース・リーも言っていたじゃないか。 感じるまま、そう感じるまま。僕は何を感じたのか。ホテルのような場所は避けるべきなのだろうということ。普通にホテルに行って普通にSMっぽいことをされたいのなら、おそらく客にそんな嗜好の者もいるだろうし、相手に困ることは無いのだろう。 となると、僕はリカの客がするであろう凡百なアプローチをするしかない。 だが・・・凡百のうちの1人に過ぎない自分に何が出来るわけでもなく、あてもなく人の少ない駅前へ出るしかなかった。 夜の7時になり、暗くなると駅前の寂しさは際だつ。チェーン店の弁当屋とコーヒーショップ、コンビニ、古くからの酒屋。その他ちらほらと個人商店が見られる程度だ。 感じるまま、そう感じるまま。 ・・・寂しい。なんと寂しい駅前なんだろう。 僕は感じようと心構えた結果、ただの寂寥感のみを感じたに留まったのだった。 -- source link
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