佳 イラストレーション個展 「記憶の標本」@大阪中崎町雑貨店Guignol 2F 2017.3.15(水)〜26(日)※火曜休個展に際して、しばらく煮込んでいた考えをこの場を借りて整理したいと思います
佳 イラストレーション個展 「記憶の標本」@大阪中崎町雑貨店Guignol 2F 2017.3.15(水)〜26(日)※火曜休個展に際して、しばらく煮込んでいた考えをこの場を借りて整理したいと思います。長くなるので興味を持ってくださる方だけ「さらに読む」からどうぞ。先入観なく絵が見たい人は読まない方がいいかも。「記憶がかえってくる瞬間が好きだ」と言って、どれくらい共感してもらえるでしょうか。長いこと開けてなかった引き出しの、奥の方にしまってた鞄の中から、無くしたことさえ忘れていたお気に入りの食玩が出てきたときの感覚がやけに強烈に残っています。自分の心が一番動くのは「懐かしい」が押し寄せてきたときだ!ということを意識してみると、身の周りがこの感覚を引き起こしてくれる装置で溢れていることに気付きました。昔のノートの落書き、交換日記の鍵、イヤホンを半分にして聴いた音楽、貰い物の服の箪笥のにおい、会いたい人に偶然鉢合わせた三叉路、一年越しにコートのポケットから出てきた紙屑……のような触媒を介してふいに記憶がもどってくるこの興奮を、ずっと可視化したかった。記憶は思い出す時のために種になってあちこちで眠っていて、思いもよらないタイミングで芽を出すのかもしれないと思い至ってからは、いろんなイメージがするする繋がっていきました。植物や果実になら、記憶を託せるかもしれない。今回の展示で主にやりたいことはこれです。とはいえ、いざとなると絵に起こしたいほどの記憶を私は持っているのか?そもそも強く印象に残ることに共通点とかあるのだろうか。と疑問に思って親しい友人に聞いてみたところ、予想外に負の出来事の方が残っているようで驚きました。いくつか記憶を題材にしてる本も読んでみたけどほとんどが記憶の回帰にマイナスイメージを持っているものだった(トラウマ的な意味で)。確かに悔しかった辛かった記憶は強いけど、時間が経てばある程度きれいに眺められる機能が備わっていて、それを愛おしいと思えるくらいには平和に育ったがゆえの今の私の感性なんだなと再確認しました。懐かしむといっても「あの頃はよかったな〜学生時代に戻りたい」というのには違和感があるから、今この時点からあの頃を思い返している時の気持ちが好きなんだろうなあ。戻れないからいいんだよね。それを自覚してからは、遠い未来で過去になるであろう今のうちに沢山種を蒔いておきたくて、行く先々で初めて会う人と話しては何かしらをお迎えしていたり。移り住んでまだ2年経たない街も部屋も、懐かしく穏やかな気持ちで思い出す時がくるだろうか。思い出せるきっかけを残せているだろうか。日記にも写真にも残っていない手がかりを五感で察知して、意図せず咲くのを歓迎したい。忘れたくないことを覚えていられるように、標本にして自分の中の棚やら抽斗やらに保管しておけたらいいな。(このあたりは小川洋子さんの『薬指の標本』の影響が強すぎる)形がないものを描くのは難しいですけれど、大事な記憶を呼び起こすような展示にできればと思っておりますので、どうぞご高覧くださいませ。 -- source link
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