hsakawa:アップルストアの神話(#1) #1 昨日家族とアップルストア銀座に立ち寄った。 「Angry Birdsを46インチ画面でやったらさぞかし面白かろう」という話
hsakawa: アップルストアの神話(#1) #1 昨日家族とアップルストア銀座に立ち寄った。 「Angry Birdsを46インチ画面でやったらさぞかし面白かろう」という話になり、さっそくiPad 2とテレビモニターをつなぐアダプタ—「Apple Digital AVアダプタ」というらしい—をさがす。店のスタッフに在処を訊ねると、すぐに商品が並ぶ棚の前に案内された。3980円という値段に内心少し躊躇いを感じながら—「あれば楽しい=不要不急」のものにしては高いとの判断—、手渡されたアダプターを手に、ネームタグに”Chie”と入ったその若い女性スタッフと少し立ち話をしていた。 「Apple TVはお持ちですか?」と訊ねられたので、「ええ」と答えたら—「わざわざSFの知人に頼んで取り寄せてもらったら、その後すぐに日本でも発売になった」といった余計なことは言わなかったが—、「Apple TVをお持ちでしたら、今度出るiOS 5にアップデートすると、iPad 2をケーブルなしでもビデオ・ミラーリングできるようになります」と教えてくれた。それで、「(10月)12日にiOS 5をDLしてみて、どれくらい実際に使えるかを確かめてから、また(買うかどうかを)考えます」と、結局そのアダプターを買わずに帰った。 アップルストアのあの女性スタッフが手に入れ損ねたものを数字で示すのはたやすい。けれども、彼女のそうした対応を通して、アップルという会社が確実に手に入れたはずのものを数字で示すのはかなり難しい。 #2 今年の春、渋谷のカフェで原稿を書いていた時のこと。入稿(締切)を控えて、MacBook Proのハードディスク(HDD)が嫌な音を立て始めた。慌ててオンラインにバックアップを保存し、歩いて数分のアップルストア渋谷へ。例の「Genius Bar」で診てもらったところ、「いつ動かなくなってもおかしくない状態」という。 「お客様のMBPは、まだ買ってから一年以内ですので(HDD交換も)無償でできます。2、3日お預けいただけますか」といわれて、大いに焦った。いくつか古いマシンが家にバックアップとしてあるにはあるものの、基本的には「これをとり上げられたらメシの食い上げ」と思ったから。「じゃあ、バルクのHDDをそこらへんで手に入れ、自分で交換するので・・・(対応するHDDのスペックを教えて)」みたいなやりとりをちょっと交わした後、対応してくれていたそのスタッフが「じゃあ、30分くらいお待ちいただけますか」といって、私のMBPを手に店の奥へ消えていった。 実際には20分くらいだっただろうか、しばらく後に戻ってきた私のMBPは、そのまますぐに仕事ができる状態になっていた(スタッフの男性が「移行アシスタント」を使ってしっかり設定・作業環境を新しいHDDに移してくれていた)。 生憎と彼の名前は失念してしまったが、総じて若い男女が目立つなかで「ベテラン」とおぼしき年頃のその男性スタッフが、スティーブ・ジョブズと同じグレイの「New Balance 993」を履いていたことは憶えている。 # 日本にもむかしから「損して得とれ」という言葉があり、またリッツ・カールトンの例の「クレド」(credo)にまつわる逸話などもよく知られているので、上に記した事柄は、ただの文字(情報)とみれば、とくに目新しさもないものと思う。ただ、「言うは易し、行うは難し」であるそうした例を、実際に目にする機会はそう多くはない。 また、アップルの「人」に関する事柄については、「Top 100」が参加するオフサイトの幹部合宿や、若手育成のための「Apple University」などに関する記述が、この数日間あらためて一部の記事に出ているが、乱暴な言い方をすると、卓越した創業者・経営者の考えを文字にして配ることや、その思いをinstill(染みこませる、内在化させる)ための機会を設けることは、どんな競合企業にもできること。また、製品自体のデザインや機能を真似ることも、そう難しくはないだろう。 アップルストアという「現場」では、スタッフの人たちがそれぞれ機転を利かして動けるようにすでになっている。このことは、ティム・クックが主体となって作り上げたとされるサプライチェーン—そのバックには「アップル銀行」と称したくなるほど潤沢な資金の裏付けがある—とならんで、アップルを今後もしばらくの間(競合各社にとって)「手強い敵」にし続ける要因になるのではないか・・・そんな想いが浮かんだ。 -- source link